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TCFD提言に基づく情報開示

ジェイテクトは、人の命を最優先し、安全第一・品質第二にこだわってNo.1 & Only Oneを目指して、地球、世の中、お客様に貢献し続けるという企業理念を掲げています。この理念のもと、当社は環境負荷極小化社会への貢献がグループ全体で取り組むべき課題であると判断し、2016年には「環境チャレンジ2050」を策定しました。「環境チャレンジ2050」では、「製品・技術」「低炭素社会の構築」「循環型社会の構築」「自然共生・生物多様性」「環境マネジメント」を5つの柱として、環境経営に関する行動計画を明記しています。

その中で、事業における中長期の気候関連リスクと機会を特定して影響を定量的に把握し、事業戦略に反映していくことが、持続的に成長できる企業の条件であると考えました。当社は、地球温暖化防止をマテリアリティ(重要課題)の1つとして掲げ、2018年に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)への賛同を表明しました。

以下に当社における気候変動への取組みを、TCFDが示す「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4項目を中心として開示します。

TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures

ガバナンス

ジェイテクトでは、社長が委員長を務める「ジェイテクト環境委員会」を中心とした環境経営の推進体制を構築しています。「ジェイテクト環境委員会」は年2回開催し、会社方針に基づいて目標値を設定するほか、方策の審議・決定および進捗状況の管理を行っております。同委員会での審議の結果は社外取締役を含む全取締役が出席する「企業価値向上委員会」に報告・審議されるとともに、対策に予算措置が必要な場合は経営役員会や取締役会に上程し、経営陣の審議を経て経営戦略に反映されます。

また、「ジェイテクト環境委員会」の下部組織には環境専門部会を設置し、省エネ/資源循環/生産技術革新/エネルギーインフラ/物流/技術・研究/バリューチェーンなど、スコープ3排出量の削減も含めた気候変動への対応を含む各分野における実務的な検討、評価を行っています。

工場レベルでの体制としては、各工場において工場長を委員長とした工場環境保全委員会を組織しており、翌月の委員会においてCO2排出量、廃棄物排出量、水使用量等をモニタリングしています。

その他、グループを横断した環境取組みを実現するため、グローバルジェイテクトグループ環境連絡会を設置しており、国内・海外グループ各社の取組みの振り返りや次年度の取組み計画の審議、環境マネジメントに関する意見交換等を行います。さらに2021年には社長直轄の「カーボンニュートラル戦略室」を設置し、事業本部間の意思疎通の円滑化を進めています。

最後に、これらの取組は定期的に「企業価値向上委員会」(社外役員を含めた取締役会メンバーを構成員とする全社登録会議)で報告され、その監督を受けております。

ガバナンス体制図

ガバナンス体制図

会議体/担当役員の説明

会議体/担当役員 役割
企業価値向上委員会 取締役会から審議・承認の権限を委譲された全社委員会。年に2回開催される。
ジェイテクトにおける環境経営推進の中心として、環境マネジメントの向上に取り組んでいる。
ジェイテクト環境委員会 環境保全活動の方向付けを明確にし、方針を審議・決定する。年に2回開催される。
決議された方針、目的・目標等を全社に展開する。
取締役社長 経営の最高責任者であるとともに、企業価値向上委員会、及びジェイテクト環境委員会の委員長を務めている。
そのため気候関連問題の最終責任を負っている。
全社環境総括 全社の環境マネジメントシステムを総括する環境担当役員。
環境管理責任者 全社環境総括を補佐する環境担当役員。
カーボンニュートラル戦略室 2021年に設置された、社長直轄の全社横断組織。
2035年にグループでのカーボンニュートラル達成、2050年にライフサイクルを考慮した全製品でのCO2排出量ゼロを目指す。
環境専門部門 ①ニュートラル技術部会、②エネルギーインフラ革新部会、③バリューチェーン部会、④環境対応製品対策部会、⑤生産環境改善部会、⑥生技革新CO2削減部会、⑦物流部会、⑧環境リスク社会貢献部会の8つの部会から構成される、企業価値向上委員会の下部組織。各分野についての戦略策定、検討などを担う。
グローバルジェイテクトグループ環境連絡会 年3回開催。国内グループ17社が参加し、取組みの評価や今後の計画などを審議する。
工場環境保全委員会 国内全13工場のそれぞれの工場長が委員長となり、2ヶ月に1回以上開催される。
各工場のCO2排出量および原単位をモニタリングし、目標達成状況を管理している。

戦略

ジェイテクトは、「環境チャレンジ2050」に基づき、5年ごとに「環境行動計画」を策定し、毎年の会社目標へ落とし込んで活動を推進しております。これら一連の数値目標は中長期的な環境経営の根幹となっております。

今回ジェイテクトはTCFD提言に基づき、脱炭素社会への移行による影響が想定される1.5℃(2℃未満)シナリオと、気候変動が進展し、物理的な影響が顕著になる4℃シナリオという複数のシナリオを使用し、分析を行いました。分析にあたっては、CO2排出量を2013年度比60%削減とする目標年の2030年と、「環境チャレンジ」の目標年である2050年における事業への影響を予想し、項目別にリスク/機会として特定しました。

使用したシナリオ

対応するシナリオ 1.5℃/2℃未満シナリオ 4℃シナリオ
概要 2100年の気温上昇が19世紀後半から1.5℃に抑えられるシナリオ。規制強化により炭素税など移行リスクの影響を受ける。ただし、物理リスクの影響は4℃シナリオに比べ相対的に少ない。 2100年の気温上昇が19世紀後半から4℃上昇するシナリオ。異常気象の激甚化など物理リスクの影響を受ける。気候変動に関する規制強化は行われないため、移行リスクの影響は小さい。
シナリオ 移行 Net-Zero Emissions by 2050 Scenario (NZE)
Sustainable Development Scenario (SDS)
Ambitious Climate Transition Scenario (ACT)
Stated Policy Scenario (STEPS)
Limited Climate Transition Scenario (LCT)
物理 Representative Concentration Pathways (RCP2.6) Representative Concentration Pathways (RCP8.5)

1.5℃(2℃未満)シナリオにおいて想定される主なリスクとして、炭素税をはじめとする規制の導入・強化を背景とした操業費の増加や、自動車の燃費・排ガス規制の強化による内燃機関車向け製品の売上減少などを特定しました。これらのリスクを回避するために、生産プロセスの省エネ化や物流の改善、製品開発の加速等を行う必要があると考えています。一方、内燃機関車からBEV(電気自動車)やFCEV(燃料電池自動車)への移行は、当社事業の機会としても捉えています。当社は現在、電動車向けベアリングや耐水素ベアリング、次世代車と内燃機関車に共通する製品であるステアリングシステムや駆動部品を展開しています。特に、2022年10月にリリースした超幅狭軸受「JTEKT Ultra Compact BearingTM」は、開発したいモノのモデルを製作し、そのモデルをベースにシミュレーション技術を活用するMBDを活用し、軸受の幅寸法を極限までコンパクト化することに成功。ユニットの小型化、軽量化への貢献が可能となりました。また、電力計である「Modbus」や消費エネルギーの可視化システムである「稼働UP Navi Pro」など、省エネ需要に合致する製品の販売を行っています。今後はこれら製品の販売や新製品の研究開発に一層注力し、市場拡大を図ります。

4℃シナリオにおいては異常気象の激甚化による操業停止を主なリスクとして特定しました。このリスクへの対策として、物流経路の見直しやサプライヤー選定基準の改定、サプライヤーの協働を積極的に行い、災害へのレジリエンス性を高めることが挙げられます。なお、4℃シナリオの機会としては、防災・減災に資する水位計の需要拡大が考えられます。当社は現在、危機管理や内水氾濫監視に適する投げ込み型水位計(省電力水位計TD4800シリーズ)を展開しています。今後の需要拡大を想定し、更なる防災・減災製品の開発を予定しています。

リスク機会一覧

種類 概要 時間軸 1.5℃
シナリオに
おける影響
4℃
シナリオに
おける影響
自社の対策
移行リスク 政策・規制
  • 炭素税の導入
    各国拠点での温室効果ガス排出が課税対象となり、操業費が増加する
  • 排出権取引制の対象拡大
    排出枠を超えた際の追加コストが発生する
短期〜長期 ・C02排出量削減目標の設定
・グループ会社を含めた排出実績の収集
・物流C02排出最削減
  • 自動車の燃費・排ガス規制の強化
    規制に対応する研究開発コストの増加、内燃機関車向け製品の売上減少が発生する
短期〜長期 ・BEV/FCEV向け軸受の開発
物理リスク 急性
  • 異常気象の激甚化
    工場の被災やサプライチェーンの寸断により事業継続が困難になる恐れがある
中期〜長期 ・ジェイテクトグループBCP基本方針を策定
・防災訓練、減災啓発、製品供給の早期復旧に向けた準備等の実施
機会 政策・規制
  • 再エネ政策
    風力発電が政策的支援を受けることにより、ベアリングをはじめとする風力発電設備向け製品の需要が増加する
中期 ・風車主軸、増速機、発電機、旋回部に使用されるベアリングを展開
  • 自動車の燃費・排ガス規制の強化
    BEV/FCEVが増加した場合、電動車向け製品やFCEV向け製品、電動車向け製品の需要が増加する
短期〜長期 ・電動駆動システムの小型化、軽量化に資する製品の開発
(JTEKT Ultra Compact Diff. ™)
(JTEKT Ultra Compact Bearing ™)
・水素脆化を克服した軸受けの開発(EXSEV-H2)
技術
  • 工場の省エネ推進
    製造段階の省エネと生産技術の革新による生産プロセスの効率化でエネルギーコストが削減され収益向上となる
短期〜中期 ・省エネ活動の継続と生産プロセスの効率化による省エネルギー生産技術の開発

(注)

1 時間軸
短期:現在~2025年 中期:2030年 長期:2050年

2 影響度評価は以下のように設定しています。
大:影響額が100億円以上のもの
中:影響額が10億円~100億円以内のもの
小:影響額が10億円以内のもの

3 定量的な分析の詳細は以下の通りです。
・炭素価格/排出権取引:カーボンプライシング導入による発生コストを試算しています。試算の際は、基準年におけるグループの燃料使用量、電力使用量などを用いました。
・エネルギーコストの変化:電力価格の増減に基づき、電力コストを試算しています。試算の際は、基準年における電力使用量を用いました。
・風力発電需要の変化:風力発電向け製品の需要変化による影響額を試算しています。試算の際は、風力発電設備の材料製品売上高及び営業利益率と、2023年度の目標値を用いました。
・自動車市場の変化:BEV向け製品の需要変化による影響額を、試算しています。試算の際は、自動車関連事業の売上高及び営業利益率を用いました。(内燃機関車とBEV車どちらにも使用される製品は対象外として試算しています。)
・原材料コストの変化:プラスチック価格、金属価格の増減に基づいたコストの変化を試算しています。試算の際は、プラスチックおよび金属の種別使用重量を用いました。
・異常気象の激甚化:洪水・高潮による国内外拠点における平均被害額を試算しています。試算の際は、国内外の各拠点の住所、階数、従業員数、在庫試算額などを用いました。
・空調コスト:空調の使用量の増減に基づいた影響額を試算しています。試算の際は、国内拠点における電力使用量、従業員数を用いました。

財務的影響

脱炭素社会への移行が進む1.5℃(2℃未満)シナリオでは、炭素税や電力価格上昇による2050年の影響額(リスク)を約100~200億円*1と想定しました。一方で電動化対応製品の売上増加やCO2排出量削減目標達成による影響額(機会)を約300億円と想定しました。
地球温暖化が進展する4℃シナリオでは、洪水や高潮被害による2050年の影響額(リスク)を約40億円と想定しました。

*1 価格変動による振れ幅を考慮

リスク管理

環境リスクへの対応

ジェイテクトでは、気候変動を含む環境リスクを事業・経営上のリスクの一つであると捉え、適切なリスク管理体制の構築に努めています。環境リスクについては、社長を委員長とする「企業価値向上委員会」が特定・評価・管理のプロセスを担っています。「企業価値向上委員会」では、ジェイテクト環境委員会や環境マネジメントシステム(ISO14001)で抽出されたリスクの識別・評価を行い、影響度、重要性、脆弱性、発生可能性の観点から優先順位付けした上で、回避・軽減などの対策を決定し、登録・管理しており、重要リスクについては定期的に取締役会に報告しております。

全社的なリスクマネジメント体制への統合

ジェイテクトは、環境リスクを全社レベルのリスクマネジメント体制へ統合し、管理しています。ジェイテクトのリスクマネジメントにおいては、リスク管理の最高責任者であるCRO(チーフリスクオフィサー)を議長とするリスク管理委員会を設置し、外部/内部の環境変化を取り込んだリスクアセスメント、対応を効果的・定期的に更新する体制の整備、定着に向けたフォローを進めています。
各事業軸・機能軸・地域軸でリスクアセスメント活動を展開し、自組織の目標達成を阻害する恐れがあると評価されたリスクについては、当該リスク主管部門が連携して、グループ横断で対策を推進しています。

リスクマネジメント体制図

リスクマネジメント体制図

当社では2030年の目指す姿、中期経営計画の実現に向けて想定される各種リスクを相対的に評価し、責任者を明確にしています。

指標と目標

2021年にイギリスで開催されたCOP26では、気温上昇を産業革命より1.5℃未満とする目標が正式に合意され、2022年にエジプトで開催されたCOP27では、1.5℃目標の重要性確認や国別目標の強化が決定しました。このように、省エネ活動のみならず、国際的な枠組みに基づいた脱炭素への要請が高まっています。

これを踏まえ、ジェイテクトは「環境チャレンジ2050」で掲げている環境負荷の極小化に向け、2035年までにCO2排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を設定しております。また、中期目標の「2030年マイルストーン」としてCO2排出量を60%減(2013年度比)するとともに、国内外のグループ会社を含め、ジェイテクトグループ全体で達成状況についてモニタリングし、CO2低減活動を進めております。

なお、算定対象は国内グループ17社、海外グループ31社です。

ジェイテクトの中長期目標一覧

目標年度 内容
2030年 スコープ1+スコープ2におけるCO2排出量を2013年比60%削減
2035年 スコープ1+スコープ2におけるCO2排出量を実質ゼロ(カーボンニュートラル)
2050年 製品ライフサイクル全体(スコープ1+スコープ2+スコープ3)におけるCO2排出量実質ゼロ(カーボンニュートラル)

スコープ別CO2排出量

(単位:千t-CO2

年度 スコープ1 スコープ2 スコープ1+スコープ2
2013年度
(基準年)
133.5 773.6 907.2
2022年度 106.9 477.7 584.6
削減率 △20.9% △38.2% △35.6%

ジェイテクトでは排出量データの信頼性向上を目的として、Scope1,2,3についてSGSジャパン株式会社による第三者検証を受審しています。

ISO14064-3:温室効果ガスに関する主張の妥当性確認及び検証のための仕様並びに手引

ISO14064-3:温室効果ガスに関する主張の妥当性確認及び検証のための仕様並びに手引