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Interviewsアスリート・インタビュー

今、充実の時… 柳田将洋の現在地
移籍の真相と追い求めた2つの「挑戦」

ジェイテクトSTINGS・柳田将洋

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ジェイテクトに所属するスポーツ選手の知られざるエピソードを深掘りするアスリート・インタビュー。第2回は、バレーボール・Vリーグを戦うジェイテクトSTINGSの柳田将洋選手にお話を聞きました。 

STINGSが2年ぶり2度目の優勝を飾った2022年末の天皇杯全日本選手権では、大会最優秀選手(MVP)賞を獲得。Vリーグでは16試合を終えてチームトップの220得点を記録するなど、移籍初年度ながら主役級の活躍を見せています。 

そんな柳田選手はなぜ自身初の国内移籍を決断し、STINGSを新天地に選んだのか。その真意と現在地に焦点を当てました。
(インタビュー日:2022年12月22日)

移籍から半年…「バレーボールを楽しめている」

天皇杯優勝の立役者が、仲間に仰向けにされて3度、宙を舞った。 

胴上げのリズムに合わせ、選手たちの雄叫びが響く表彰式後の東京体育館。「高所恐怖症だから呼ばれたくなくて、パネルの後ろでコソコソしていたのに」。そう苦笑する大会MVPをチームメートが取り囲み、歓喜の輪をつくる。 

2年ぶりに賜杯を抱いたSTINGSの中心にいたのは、半年前に加入したばかりの柳田将洋だった。3-0で快勝した決勝戦を含め全5試合に先発出場し、計72得点。最大の武器である強気のサービスでチームを勢いに乗せ、窮地をも救ってみせた。 

攻撃の主軸を担うその姿は、昨季までの2年間を過ごしたサントリーサンバーズ時代と変わりない。変わったのは、担う役割の多彩さ。守備にも躍動し、「急造」と揶揄(やゆ)されたチームの完成度を高めることに心を砕く。新加入の外国人選手のケアにも気を配る日々。 

「考えることが多くなって、やることが増えて本当に忙しい。でも結果的にバレーボールを楽しめている」。 

理想とするプレーヤー像に近づくため、慣れ親しんだ環境を飛び出してたどり着いた新天地。コート内外に自身の経験のすべてをぶつけられる環境で、柳田は今、充実の時を迎えている。

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天皇杯MVPに輝き、チームメートらに胴上げされる柳田将洋=東京都渋谷区の東京体育館で

真価を問う移籍 掲げた2つの挑戦

決勝戦からさかのぼること5カ月前。2022年7月に名古屋市内で開かれた新加入選手発表記者会見で、柳田は強い決意を語っていた。

「自分の役割をもう一度確認したい」。

新天地に求めた条件は2つ。「アウトサイドヒッターとして、守備も含めたオールラウンドな役割を担えること」と「リーダーとしての自分の力量を試すことができる環境」。特に前者への思いは、サントリーの起用方針に起因していた。

ドイツ、ポーランドでの海外挑戦をへて、新人時代を過ごしたサントリーに4季ぶりに舞い戻った2020年。与えられた役目は「点取り屋」に専念することだった。

処理の難しいフローターサーブへのレシーブ機会など、守備的な役割は実質的に免除された。在籍した2年間でチームがVリーグ連覇を果たす中、自身は世界屈指のスコアラーである同僚・ムセルスキーに次ぐ得点を記録。2年連続でリーグベスト6にも輝いた。

プロとして求めに応じたプレーを見せることはできた。それでも「攻撃から守備から、本当にいろいろなプレーが求められるのが本来のアウトサイドヒッターの姿。自分ももっと幅広い役割を任せてもらいたい」という思いはくすぶり続けていた。

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ジェイテクトSTINGSの新入団選手発表記者会見で意気込みを語る柳田=名古屋市で

東京五輪落選も契機に…

東京五輪の代表落選も、移籍への思いに拍車をかけた。コロナ禍により2021年夏に延期された夢舞台は、直前まで代表チームの主将を務めながら夢に終わった。

「日本代表にとって守備は絶対に落とせないスキル。当然それはわかっていた」。

リーグでの守備機会が少なければ、自身の守備能力をアピールする機会は減る。結果として定量的な数字、成績は下降していった。守備成績が代表の選考基準に大きく関わってくるということを理解していたからこそ、やるかたない思いが募った。

「もちろんそういうプレーに関わっていなかったことによるブランクはあった。でも、守備ができないわけじゃない。それを別のチームで見せることで、事実に変えることができるのかなって」。

「自分らしく」 自問自答の末

柳田はプロ選手になって以降、毎年リーグ戦の7割ほどを消化する時期に、意識して自身の進退に思いを巡らせる時間を設けている。

「高いモチベーションでプレーを続けられているか。このチームで『自分らしく』いられているか」。

自問自答の末、サントリー退団の意思を固めたのは、リーグ連覇に向け突き進んでいた2022年2月ごろ。これまでの移籍と同じように、周囲に助言は求めずに決断した。

移籍先を選ぶにあたり、直接的なプレー面以外で試したかったのが、自身のリーダーとしての力量だった。日本代表では主将を務め、サントリーでも先頭に立ってチームを引っ張ってきた自負はある。海外での経験も自信の上積みにつながった。では、1から始まるチームをまとめあげる度量は自身にあるのか。

「新しい環境で、新しいチームメートに自分の思いが伝わるのか。逆に、選手たちの思いをつなげていろいろなプレーに反映させることはできるのか」。

現役日本代表の西田有志、関田誠大、スロベニア代表のウルナウト、一昨季にリーグ最優秀新人賞に輝いた河東祐大―。大型移籍が次々と発表され、昨季7位から新たなチーム像を模索していたSTINGSのオファーは、柳田にとって渡りに船となる吉報だった。

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新入団発表記者会見でポーズをとる選手ら。(左から)西田、関田、柳田、河東=名古屋市で

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