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【リーグ開幕!キャプテン対談】勝利で感動を届けたい。
ジェイテクトSTINGS愛知 高橋 和幸×ジェイテクトStingers 野田 悠斗
ジェイテクトSTINGS愛知 キャプテン#21リベロ 高橋 和幸、ジェイテクトStingers キャプテン#5 野田 悠斗
スポーツの秋です。
2024年10月、バレーボール界では、2023/24シーズンまで行われてきたV.LEAGUEが再編成され、「世界最高峰のリーグを目指す」をコンセプトにした新トップリーグ「SV.LEAGUE」が開幕しました。
そして、バドミントン国内最高峰リーグであるS/Jリーグでは、2024年2月、トップカテゴリー昇格からわずか6年目にしてジェイテクトStingersが悲願の初優勝を果たしました。
新生SV.LEAGUEの初代王者として名乗りを上げられるか期待がかかるSTINGS愛知と、ディフェンディングチャンピオンとして11月開幕のS/Jリーグ二連覇に挑むStingers。
そんな両チームを今シーズンからキャプテンとして牽引していく二人の素顔に迫ります。
(インタビュー日:2024年10月23日)
二人のキャプテン
ジェイテクトSTINGS愛知のキャプテン・高橋 和幸
2000年生まれの高橋がバレーボールを始めたのは小学2年生の頃だった。バレーボール一家であった高橋家、姉が通っていたバレーボール教室への体験入部が競技人生のスタート地点。幼少期からサッカーを習っていたこともあり、走ることやスポーツ全般が好きな子供だったという。
高校時代は春の高校バレー優勝を経験し、大学時代は4年次にキャプテンを務めた2021年の全日本大学男子選手権で11年ぶりとなる決勝の舞台にチームを導いた。
2022年、将来的に自身を海外でも通用する選手に育ててくれるチームであると感じてジェイテクトに入社し、同年には日本代表にも選出された。
そして今シーズン、2019年から5年間キャプテンを務め、高橋と同じリベロとして活躍した本間 隆太の引退を受けてキャプテンを引き継いだ。
ジェイテクトStingersのキャプテン・野田 悠斗
1997年生まれの野田がバドミントンを始めたのは、高橋と同じく小学2年生の頃。バドミントンと並行してテニスも習っており、実は中学校ではテニスを続けたいと思っていた。
しかしながら、進学先にはテニス部が無く、それは野田がバドミントンを続けるきっかけ、ひいては野田にバドミントン選手としてのキャリアを歩ませるきっかけとなった。
大学卒業が近づき、実業団チームを探す中で、当時Stingersで1年目ながらもイチウマペアとして存在感を放っていた市川 和洋・馬屋原 大樹から熱心に声を掛けられたことが決め手となって2020年にジェイテクトに入社した。宮嶋 航太郎といった憧れの選手のように強くなりたい、そんな思いもあった。
そして昨シーズン終了後、2部リーグ時代の苦労を知るキャプテン・宮嶋が引退し、新たにキャプテンを任された。
チーム内の仲の良さはSTINGS愛知にとってもStingersにとっても一番の自慢
STINGS愛知とStingersは愛知県刈谷市のジェイテクト体育館を練習拠点とする。刈谷市内の社員寮で生活する選手も多く、顔を合わせる機会はあるものの、普段交流は少ないというので、改めて自身のチームの雰囲気と、お互いのチームの印象について尋ねてみた。
高橋は「STINGS愛知は昔から変わらず“仲が良いチーム”なのが自慢ですね。自由な雰囲気で、年齢に関係なく意見を出し合える感じ。Stingersにも同じような印象があって、ワイワイ楽しそうではあるけど・・・練習はとてもハードそうに見える」とチラッと野田を見る。
例えば、STINGS愛知の選手がウォーミングアップとしてミニサッカーやバスケットボールなどをやっている横で、Stingersの選手は走り込みやステップ等のトレーニングに時間をかけている場面があるようだ。
野田は「本当にそのイメージの通りですね!自分たちが“あぁ練習キツイな”と思って横を見るとSTINGS愛知はいつも楽しそうなことをしている・・・」と頷く。
加えて「StingersはチームのSNSを見てもらえれば伝わると思いますが、盛り上げ役が多くてとても仲良し。でも実は全員、“自分が一番強くなりたい”と思いながらキツイ練習を乗り越えているので、表には出さないけれどプライドを持っていますよ」と笑顔の中に熱い思いを覗かせた。
両チームのファンならご存じかも知れないが、高橋はS/Jリーグ初優勝の立役者の一人であるStingers相澤 桃李選手と同期入社で、野田はSTINGS愛知のムードメーカー・道井 淳平選手と同期入社だ。
そのため、高橋は昨年のS/Jリーグ決勝戦をはじめとする相澤が出場した試合の動画を見たり、野田は道井と「リーグの調子どうなの?最近、チームはどんな感じ?」と声を掛け合ったりするという。
日ごろチームとしての交流機会は少ないながらも、お互いのチームに同期入社の選手がいるので、気になる存在ではある様子。
コミュニケーションこそ、結束力の原点
昨年のリーグが閉幕した頃、二人はそれぞれの監督からキャプテンにならないかと打診された。
高橋は今のSTINGS愛知でキャプテンを務めることが将来の自分にとって大きな糧になると率直に感じたという。
キャプテンという役割自体は前述の通り大学4年生のときに経験しており、その頃に得た「みんなと会話をすることがチームスポーツには欠かせない」という学びが活きている。
バレーボールは“つなげる”スポーツ。少しでもタイミングがずれると相手チームにチャンスを与えてしまうので、たとえ得点できたとしてもチームの息が合っていないと感じれば高橋が積極的に声をかけて修正をかける。またコートの外では、コミュニケーションを通じてチームメイトが楽しくバレーをできるように、そして選手・監督・スタッフの連携を高められるように働きかける。
言わば、リベロというポジションに求められる役割を超え、チームにとっての仲介役になっているのだ。
「開幕戦2日目の試合で負けてしまったとき、チームの中にとても苦しい空気が漂っていました。“練習から雰囲気を変えていこう。どうしたらモチベーションを上げられるのか”とみんなで話し合ったところ、次の練習日から全員の意識がガラッと変わって雰囲気が格段に良くなったんです。結果的に翌週の試合は2日間とも勝利を飾ることができました」と10月の試合を振り返った。
高橋よりも長くキャリアを積んでいる選手や日本代表選手が数多くチームに在籍する中で、彼がなぜSTINGS愛知のキャプテンを任されたのか。試合を見れば、その意義を感じ取ることができるだろう。
野田は、年齢的にも自分に声が掛かる可能性は高いと思っていたものの、これまで学生時代にキャプテンの経験はなく、「僕はいわゆる“キャプテン”という言葉から連想されるような、グイグイみんなをひっぱるキャラではないですよ」という自己分析。
キャプテンだから表に立たないといけないと気負うのではなく、チームの誰かが頑張れないときこそ自分が率先して声を出して、みんなで盛り上げていこうとスイッチを入れることが、彼のキャプテンとしてのスタイル。
日ごろの練習でお互いにアドバイスをしたり、試合を終えたチームメイトに「今の試合、自分的にはどうだった?」と声を掛けたり、時には愚痴を聞いたり・・・自ら積極的にコミュニケーションをとりにいくことでチームの結束力を高めていく。
「佐野 大輔選手のように、ダブルス歴が僕よりも長い選手たちから色々と教えてもらうことも多いですね。練習は自分が何も言わなくても、みんな当たり前に頑張ってくれているから大丈夫」という野田の謙虚さやチームメイトを信頼する姿も、Stingersのアットホームな雰囲気づくりにつながっているのだろう。
一方でメリハリをつけることも大切なこと。「試合会場は当然、緊張してピリピリしますよね。でも、試合中だけその状態になるのはダメだと思って、練習でも試合と同じ空気感で臨むように意識しています。練習中にコートに入った人が一人でもピリっと緊張感をもっていたら、ネットの向こう側にいるチームメイトにも伝わりますから」と、ON・OFFの切り替え係も担っている。
気持ちの切り替えはどんな競技でも重要なこと。試合で困難な状況のとき、彼らはそれをどう乗り切るのだろうか。
「実は、接戦のときこそ“この場面楽しいな”と、焦りよりもむしろワクワクする気持ちになります。もちろん、次の試合に向けて同じミスをしないように戦略をしっかり考える必要はありますが、ポジティブでいることが良い結果につながることを10月の試合で実感したので、試合で負けても“死にはしないから大丈夫”くらいの感覚でいます」と話す高橋と、「団体戦か個人戦かでも意識するべきことは変わりますが、団体戦ではチームのためを考えて、そして個人戦はしっかり自分のことに集中します。負けそうな状況の中でも、自分にとって少しでもプラスになるように最後まで全力を出し切ることですね」と話す野田。
前向きな気持ちを保つことが数々の壁を乗り越える秘訣だと二人は教えてくれた。
コミュニケーションだけじゃない。勝利に近づく大事なルーティン
春先まで長く続くリーグの中で一試合でも多く勝利するために、コミュニケーションを通じたチームの雰囲気づくりの他にも、何か自分自身やチームを鼓舞するために行っているルーティンがあるはず。
チームの公式プロフィールでは、高橋は「10回ジャンプ」、野田は「ラジオ体操第4」と記載されているが・・・
「試合開始前の10回ジャンプは本当にやっていますよ! “靴紐は左から結ぶ”といったような、いつの間にか習慣になっていることは、やらないと変な感じがしますね。それから、チームの一体感を高めるために、練習のときも試合のときも、僕が“Go”と言って、続けてチームのみんなが“STINGS愛知”という掛け声から始めるようにしています」と、バドミントンより一足先にリーグが開幕していることもあって気概を見せながら答える高橋。
そして野田は「試合では、みんなで円陣を組んで“エイ エイ オー”と掛け声を出すのですが、そろそろリーグが開幕するという時期からは練習でもそれをやるようにしています。そうすると、グッと試合が近づいてきた感じがして、気持ちの切り替えになりますね」と答えるものの、ラジオ体操については「ちょっとふざけて書いてしまいました」と小声で回答。
何はともあれ、高橋と野田がチームを鼓舞して試合に臨む様子は会場でぜひ確認してみてほしい。
ちなみに、高橋の勝負飯は「豚の生姜焼き」で、野田は「特に何も・・・」と言いかけたところで「みんなで一緒に食事をするので、試合前にみんなで食べたごはんが勝負飯になります」と訂正を入れた。