低炭素社会の構築
2020年10月、日本政府が「2050年カーボンニュートラル、 脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言。また、2021年にイギリスのグラスゴーで開催されたCOP26においては、気温上昇を産業革命より1.5℃未満とする目標が正式に合意され、カーボンニュートラルの実現に向けた取組みが加速する1年となりました。
ジェイテクトでは地球温暖化を防止し、気候変動による様々な影響を軽減するためグループ全体で2035年の生産におけるCO2のカーボンニュートラル達成に向け、事業活動に伴うエネルギー使用量を極小化し、製品の設計から納入までの全プロセスにわたる省エネ化や物流改善、再生可能エネルギーの利用促進を推進して参ります。
主要な2023年度実績
2025年環境行動計画/2023年度活動実績
[ ]2013年比
区分 | 取組み項目 | 目標・取組み方針 | 2023年度活動実績 | 評価 | |||||||||||||||
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CO2排出量の削減 | (1)生産・物流活動におけるCO2の削減 ・グローバルなCO2の削減 ・物流改善によるCO2の削減 |
《生産》 ①工場の日常改善活動によるCO2削減活動の推進 (生産性向上の追及、高効率機器採用、省エネ診断等の取組みを展開) ②生産技術革新による低CO2生産技術の開発・導入
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◯ | |||||||||||||||
《物流》 物流効率の向上および燃費向上によるCO2排出量削減
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(2)再生可能エネルギーの推進 | 各地区、各地域の特性を考慮した再生可能エネルギーを推進
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TOPIC
カーボンプライシングの取組み
カーボンプライシングとは、炭素税や排出量取引などにより炭素に価格を付けることで、CO2の排出削減に対する経済的インセンティブを創り出し、気候変動への対応を促すことを目的とする制度です。
ジェイテクトでは、インターナルカーボンブライシングとして、新規設備を導入する際、稟議書に設備のエネルギー使用量と製品1個あたりのCO2排出量を記載した「エコシート」を添付しています。 これにより、従来設備と比較して、新設・開発機の場合は製品1個あたりのCO2原単位を大幅に削減するよう投資判断の基準を設定し、運用しています。
また、排出量削減活動への投資を促進するため、投資の判断基準を緩和し、積極的な投資を促すため、省エネルギー投資に関しては、投資回収年数を4年に拡大し、CO2排出量の削減に繋げています。
工場日常改善の取組み
生産におけるCO2排出量削減
●単独
ジェイテクトでは、CO2総排出量を2025年度までに2013年度比で35%、2030年度までに60%削減するチャレンジ目標を設定し活動を推進しています。
2023年度のCO2総排出量は、電力会社のCO₂換算係数悪化により、昨年度比で2%増加の209.5千t-CO2となりましたが、省エネ取組みとエネルギーのグリーン化により、2013年度比で41.5%削減し、2023年度目標を達成することができました。
またエネルギーの使用の合理化等に関する法律(以下、省エネ法)に基づく2022年度の事業者クラス分け評価制度では、Aクラスに評価されています。
CO2総排出量※1 | 209.5千t-CO2(41.5%減) |
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※1:購入電力会社毎の年度別の実換算係数(マーケットベース)を用いて算出
生産におけるCO2総排出量
●グローバル
国内外のグループ会社も含めた2023年度のCO2総排出量は、CO2換算係数の悪化により、昨年度比で4.6%増加の645.6千t-CO₂となりましたが、省エネ取組みによる原単位改善などにより、2013年度比で31.8%削減し、2023年度目標を達成することができました。今後は更なる省エネ活動とエネルギーのグリーン化により、2030年度までに60%削減するチャレンジ目標の達成に向けて活動を推進していきます。
グローバルCO2総排出量 | 645.6千t-CO2(31.8%減) |
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グローバルCO2総排出量
「環境チャレンジ2050」実現への取組み
ジェイテクトでは、「環境チャレンジ2050」に掲げた目標に向けて、「2025年環境行動計画」に基づき、各種省エネ対策を推進しています。
1.省エネ診断
2023年度は、新たな省エネアイテムの創出や省エネ診断技術者のレベルアップを図るために、社内診断チームにより徳島工場並びに国内グループ会社であるジェイテクトメタルテック株式会社の診断を実施しました。
診断により創出されたアイテムは全工場に横展開され、省エネ活動推進に貢献しています。
2024年度も引き続き社内診断チームにて社内および国内グループ会社の診断を実施する予定です。
超音波流量計による冷却水の流量測定
改善事例:豊橋工場
改善前
温度調節器の操作スイッチが設備の裏側にあるため、停止・復旧のために何度も往来する必要があり、停止時間が確保できず昼休憩などの非稼働停止が行えていませんでした。
改善後
温度調節器の操作スイッチを生産設備の操作盤に増設することで温度調節器の停止作業を簡素化。こまめな非稼働停止を行えるようになりました。
【削減効果】
・電力消費量:約7,800kWh/年(約2.9t-CO₂/年)
・コスト:\850,000 ※労務費等エネルギーコスト以外も含む
改善事例:岡崎工場
改善前
コジェネレーションシステムの排ガスボイラーの給水ポンプの送水量は1,740ℓ/hとなっており、蒸気使用量が少ない時は頻繁に発停を繰り返す、非効率な運転となっていました。
改善後
給水ポンプのインバータ設定周波数を43%に下げ、送水量を750ℓ/hに調整。
運転時間を6h/日から13.8h/日に延長し発停回数を減らすことで消費電力を24%削減。
発停回数を減らしたことでポンプ寿命も7年から10年に向上しました。
【削減効果】
・電力消費量:約3,500kWh/年(約1.3t-CO₂/年)
・コスト:\80,000 ※ポンプ寿命向上による修繕コスト削減分も含む
再生可能エネルギーの導入
2023年度は、日本・海外の全9拠点でオンサイトに、計5.04MWの太陽光発電システムを導入し、年間約2,200tのCO2排出量を削減しました。
これにより再生可能エネルギーの導入量は、ジェイテクト単体では6.38MW、グループ全体では37.7MWとなりました。
今後もCO2排出量の削減を目的に、2030年にグループ全体で60%以上の再エネ導入率※チャレンジ目標達成を目指して積極的に取組んでいきます。
※再エネ導入率=再エネ電力量/全電力使用量
オフサイトにおける再生可能エネルギーの導入の取組み
2023年度は、ジェイテクトグループとして初めてオフサイト(当社敷地外)の太陽光発電設備から、再エネ可能エネルギーを調達する取組みを開始し、アメリカでは142.8MW、日本ではの11.9MWのバーチャルPPA(Power Purchase Agreement:電力購入契約※)を締結しました。
本契約により、再生可能エネルギーを発電することで生まれる「環境価値」を受領します。この環境価値により、北米の全ての生産事業所で使用する全電力使用量に相当する年間約12万4,600トンのCO₂排出量をオフセットします。
本契約で活用する太陽光発電所は、発電者により新たに設置される「追加性」を有しています。ジェイテクトは、「追加性」のある再生可能エネルギーを導入することで、社会全体の再生可能エネルギーの拡大に貢献していきます。
※バーチャルPPA
発電事業者と需要家による直接の電力の売買契約。
バーチャルPPAは「仮想の電力購入契約」を意味し、需要家の敷地の外に建設した再エネ発電所から、発電量に応じた電力を伴わない環境価値のみを取引するもの。
主な実施内容
ジェイテクト:田戸岬工場
国内グループ会社:ジェイテクトギヤシステム株式会社
海外グループ会社:JATH(タイ)
ジェイテクト田戸岬工場では2023年度に、限られたスペースにおいて設置が可能となる垂直設置型の太陽光発電設備(フェンス式)で500kWの太陽光発電システムを導入しました。
また、国内グループ会社のジェイテクトギアシステムでは、従業員駐車場に1,520kWのカーポート式太陽光発電システムを導入しました。国内の事業所では、建物屋根の耐荷重の関係で、太陽光発電の設置可能場所に限りがあるため、フェンス式/カーポート式太陽光発電の導入を推進しています。
タイの海外グループ会社JATHでは968kWの太陽光発電システムを導入。
今後も環境負荷が少ない再生可能エネルギーの導入に取組み、自然と調和する工場づくりを進めていきます。
ジェイテクト田戸岬工場
ジェイテクトギヤシステム
JATH(タイ)
JATH(タイ)
生産技術革新によるCO2削減の取組み
2035年カーボンニュートラル達成に向けて、生産技術の取組みとして2023年度は1,353tのCO2排出量を削減しました。
生産技術のカーボンニュートラル活動として、大きく3つの取組みを行っています。
①地道な改善活動
CT短縮、からくり導入、待機時停止、エアーmin化、ダウンサイジング、インバータ化などの生産のムダゼロを追求する活動
②生技要素開発
素形材、熱処理、加工、組立と工程スルーで考え、設備・工法の高効率・高能率化、省機省工程を実現する要素技術開発
③カーボンニュートラル革新開発
画期的な削減を目指して、ガス⇨電気⇨水素などのエネルギー置換・回収の革新技術開発
これらの取組みの中で、今回は軸受の熱処理工程のカーボンニュートラルに向けた取組み事例を紹介いたします。
深溝玉軸受 1個流しIH焼入れ装置の開発
背景・目的
ジェイテクトの全工程のCO2排出量のうち、22%を熱処理工程が占めています(図1)。
その中でも軸受の生産比率が高くなっており(図2)、特に製品外径が大きいものほどCO₂排出原単位が高くなっています。
図1 ジェイテクト国内工場CO2排出量内訳
図2 製品サイズごとのCO2排出量比較
一般的な軸受の熱処理工程では雰囲気ガス炉を使用しており、熱処理に必要な製品の加熱や搬送などにつかわれるエネルギーは投入エネルギーのわずか20%程度で残り80%はロスしています。(図3)
また、雰囲気ガス炉は大量集中工程のため、熱処理の前後工程の物流によるCO2排出も課題の1つです。
今回、これらのエネルギー消費を削減するために、雰囲気ガス炉からの脱却、工程間の物流廃止について着目し、製品外径の大きい深溝玉軸受の熱処理工程の開発取組みを行ないました。
図3 バッチ炉エネルギ消費量内訳
取組み結果
従来の深溝玉軸受の製造工程では熱処理の加熱~焼入れに雰囲気ガス炉を使用していますが(図4)、開発工程ではエネルギー効率を向上し、かつ前後工程とリードタイムを同期させるために、製品を直接加熱でき、短時間加熱化が可能な誘導加熱を採用しました。(図5)
また、誘導加熱に使用する焼入れコイルはCAE解析によりコイル形状の最適化を行うことで、温度不均一を改善しています。(図6)
これらの加熱効率化によって、開発工程はCO2排出量を▲45%削減できました(図7)。今後は他型番への展開し、さらなるCO2削減を目指します。
図4 深溝玉軸受の一般的な製造工程(抜粋)
図5 開発設備の製造工程(抜粋)
図6 誘導加熱コイルの最適設計
図7 CO2排出量の削減効果
物流におけるCO2排出量削減
2023年度は、物流業者様の協力による低燃費トラックの導入やドライバーへのエコドライブの協力要請、運送便の統廃合により、CO2排出原単位の改善に繋がりました。
また、セミトレーラー+船による積載率向上・効率化とコロナ禍による荷量減少に伴い、2018年度比で排出量が約25%減少しました。
2024年度は、輸送モードの最適化(鉄道・船・セミトレーラー等)や積載量変動を見極め、トラック便の改廃推進等で更なる削減に取組み、排出量9.1千tを目標として推進します。