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アカウミガメの未来のために、子どもたちと一緒に豊かな砂浜を取り戻す

神原 佳幸(安全環境推進部 グループ長)
鈴木 朋憲(豊橋工場工務部 係長)
古川 永泰(豊橋工場工務部 主任)

Interview

11月20日が「世界子どもの日」ということで、今回のJTEKT STORIESでは、子どもたちにかけがえのない地球をつなげるジェイテクトの取り組みを紹介します。

絶滅危惧種であるアカウミガメ。ジェイテクト豊橋工場からほど近い愛知県渥美半島・七根海岸はアカウミガメの産卵地であるのですが、その様子が大きく変わってしまっています。
豊橋市の観測では、10年前には100匹以上のアカウミガメが産卵していたのが、昨年はたったの2匹。

産卵に適した浜辺が失われつつある七根海岸を守り、そして地域の子どもたちに自然共生活動の大切さを伝える3人の決意をお伝えします。
(インタビュー日:2024年11月8日)

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ジェイテクトグループの社会貢献活動

世界中のジェイテクトグループ社員共通の価値観である「ジェイテクトの基本理念」では「地球のため、世の中のため、お客様のため」を最上位に掲げています。

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これは、私たちのモノづくりを通じて社会課題の解決に貢献するとともに、事業活動によって発生する環境負荷の低減にジェイテクトグループ全員で取り組むことで、かけがえのない地球を次世代につないでいこう、という決意を表しています。

そして、事業活動以外の社会貢献活動においても「ジェイテクトグループ社会貢献活動方針」のもと全社の社会貢献活動を展開しており、オールジェイテクトでの2035年生産におけるカーボンニュートラル達成に向けた事業活動と合わせて、すべての子どもたちが健やかに育つ環境づくりに取り組んでいます。

ジェイテクトグループの自然共生活動は「一工場一活動」

ジェイテクトグループでは「一工場一活動」を掲げ、地域の方とともに年間約70件の自然共生活動を実施している。

その内容は、各工場に生息する「希少な生き物の保全」、各工場を取り巻く「地域の自然環境の整備」、継続的に生物多様性保全を図るための「環境人材の育成」という3つの柱のもと、刈谷工場のカキツバタ群落保護活動、田戸岬工場のコアジサシ営巣地の保全活動、奈良工場のニッポンバラタナゴ保護活動のように多岐にわたる。
海外現地法人でも、フランスでのミツバチの保護活動やインドネシアでのマングローブの森林再生など、精力的だ。

これらの自然共生活動を統括するのは、安全環境推進部に所属する神原だ。

「コロナ禍で活動が縮小した取り組みもあります。それらをより良い取り組みに復活させるべく奮闘中です。ジェイテクトの事業との関連性を強められないか、各地域の特性を踏まえてどのような取り組みが必要なのか、といった観点で各工場の担当者とともに試行錯誤しています」と言う。

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神原が「ジェイテクトの自然共生活動の中でも特に、地域連携もしっかりしながら、子どもたちへの環境教育もできているので、ぜひ多くの方に知っていただきたい」とイチオシするのが、豊橋工場の活動だった。

地域と共に挑む。豊橋工場による砂浜再生プロジェクト

去る929日、豊橋工場社員とその家族、近隣小学校に通う生徒とそのご家族71名が七根海岸に集まった。
アカウミガメをはじめ、多くの生きものが暮らす砂浜を取り戻すための自然共生活動『海岸清掃~砂浜ふれあいウォーク~』の参加者たちだ。

豊橋工場では10年以上、豊橋工場近隣の小学校と一緒に海岸清掃活動に取り組んでいる。昨年までは、清掃活動をしながら海辺を歩いてもらうことで生き物を身近に感じてもらうことがメインの活動だった。
今年は一歩踏み込んだ活動として「海岸の清掃」に加えて「砂浜の再生」による希少種保護活動をプロジェクトに取り入れた。

これは安全環境推進部と豊橋工場で意識を共にしていた「昨年までの活動よりも、もっと良くしたい」という思いと、豊橋工場の自然共生活動をサポートしてくれている地元のNPO法人からの「七根海岸の再生に協力してほしい」という提案が合致して実現したのだった。



砂浜の"再生"とはどういうことか。

護岸工事や堤防建設などによる人為的要因や、波や風の作用といった自然要因によって侵食傾向にある砂浜を「堆砂垣」によって再生する活動だ。

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「海岸から30mほど離れた場所に、メダケという海辺に群生する植物で編んだ生け垣"堆砂垣"を作ります。そうすると風に乗った砂が堆砂垣に捕捉され、やがて堆砂垣と同じ1.5mの高さまで砂が積もるんです。毎年少しずつ設置場所を移動させることで砂浜の浸食を抑制しながら砂浜を豊かにし、アカウミガメが産卵しやすい環境を整えることにつながるんですよ」と、プロジェクトの中心メンバーである豊橋工場工務部の古川が説明した。

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「設置した5基の堆砂垣の経過は定期的にNPO法人から写真付きで報告してもらっていて、今のところ順調そうな様子です。初めての取り組みなので、これからどうなるか楽しみですね。協力してくださった皆さんに良い報告ができればいいな」と、同じく豊橋工場工務部でプロジェクトを推進する鈴木はワクワクした様子で話す。

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冬の時期に砂が堆積しやすいので、冬が来る前に堆砂垣を作るのがポイント。また、堆砂垣は自然に還る材料で作られているので、たとえ海風によって倒されても環境への悪影響は心配ない。自然共生活動を推進する上で、活動中の環境配慮も欠かせないことだ。

家族で楽しみながら学べる活動を。子どもたちの笑顔がモチベーションの秘訣

『海岸清掃~砂浜ふれあいウォーク~』は海岸清掃と砂浜再生だけでは終わらない。
ごみの分別や海洋生物に関する環境教育、そして豊橋市が生産量日本一を誇るウズラの卵の殻を肥料にして栽培された「うずらいも」の芋掘り体験がセットになった盛りだくさんのプロジェクトだ。

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なぜ、こんなにもイベント盛りだくさんのプロジェクトになったのか。

「家族で参加したいと感じてもらえる活動であるか、子どもたちが楽しみながら学べる内容か、という視点で毎年試行錯誤しています。その結果、今年は初めてのこと尽くしになりました()豊橋工場工場長の西尾さんも後押ししてくれているので、より魅力的な企画になるように頑張っています」と鈴木。

参加する子どもたちは近隣の小学校の生徒だけでなく、社員の家族もいるため、年齢層は幼稚園から中学生まで幅広い。そのため、"小さい子どもでも安全に取り組めるやさしさ"と"高学年でも退屈せずに学びを得られる充足感"を両立する必要がある。毎年、参加者にアンケートを実施し、そこから見つけた課題や反省点をもとに次回の企画を考える。

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<昨年は貝殻を使った表札づくりを実施。小さい子どもでも工作しやすいように、貝殻の裏に紙粘土を埋めて平らにすることで、土台の板に容易にのり付けできる工夫を施した>


NPO法人との打ち合わせや近隣小学校への声掛け、豊橋工場の社員に向けてのボランティアスタッフ募集、うずらいもをプロデュースする道の駅への協力依頼、安全な運営のための看護師の手配など、今年は5月から準備を始めた。

『海岸清掃~砂浜ふれあいウォーク~』で目指していることに共感してもらえたからこそ、多方面の方々から協力を得ることができたのだった。



開催までの道のりでは、もちろん苦労もあった。

しかし、子どもたちが海辺の生き物に目を輝かせている姿や、職場の仲間たちの「小学校以来、久々に土を触ったわ~」と真剣且つ楽しそうに堆砂垣を編んだり芋掘りをしたりしている様子を見て、「頑張って準備した甲斐があったな、という達成感の方が大きいです!」と、古川と鈴木は口を揃えた。

また、何年もリピーターとして参加してくれている地域の方からの「また来年も楽しみにしていますね」という嬉しい声は、この先も豊橋工場の自然共生活動を見守りたいと思ってもらえていることの表れである。

そういった方の期待を超えられるよう、そして子どもたちの笑顔に応えられるよう、二人は早くも来年のプロジェクトに向けて、試行錯誤の日々を始動させている。

人と人とのつながりの大切さを知ったからこそ、これからも挑戦したい

「アカウミガメは自分がかつて生まれた海岸に帰ってくると言われています。しかし現在の七根海岸は、せっかくアカウミガメが上陸しても、産卵できる環境ではないと判断してそのまま海に引き返してしまいます。砂浜の浸食以外にも、例えば、砂浜で人間が車のライトを点けて騒音を起こすこともアカウミガメが引き返していく要因の一つ。つまりアカウミガメが安心して産卵できる砂浜づくりには地域の方々の協力が不可欠です」と神原は話す。

自然共生活動は結果がすぐには見えない。だからこそ地域と連携して活動を継続することが重要なのだ。

古川は「僕はこのプロジェクトに参加するまで、当たり前にあるものだと思っていた砂浜が消失していくという環境問題があることを知りませんでした。『海岸清掃~砂浜ふれあいウォーク~』で砂浜が綺麗になるのを体感した子どもたちも、海岸に落ちている大量のゴミがどこから来るのかを考えるきっかけになったと思います」と話す。
子どもたちが自然の大切さを自ら学ぶ姿勢を持つきっかけづくりとして、これからもプロジェクトに注力していきたいと意気込みを見せた。

鈴木は「『海岸清掃~砂浜ふれあいウォーク~』をきっかけに、他の環境問題や530(ゴミゼロ)運動など地域のボランティア活動にも家族で関心を持つようになりました。参加した子どもたちやそのご家族も同様に色々な環境問題に目を向けてくれるようになれば、このプロジェクトの本当の意義が伝わったことになります」と、プロジェクトの継続によって地域の方々に少しずつ環境意識を広げたいという強い意志を持つ。

そして「人と人とのつながりの大切さを改めて実感しました。自分たちだけではできることが限られていますが、協力してくれる仲間のおかげで今回のように新しいことにも挑戦できました。賛同してくださった皆さんには本当に感謝しています」と続けた。

新たな挑戦として、『海岸清掃~砂浜ふれあいウォーク~』の他にも何か構想があるのか尋ねてみた。

すると古川が「実は、近隣の小学校高学年向けにジェイテクトSTINGS愛知の選手たちによるバレーボール教室を今年から再開したんです。トップリーグで活躍する選手たちから指導を受けている子どもたちのキラキラした笑顔を見て、来年もバレーボール教室を成功させたいと強く思いましたね。更にジェイテクトにはバドミントンチームのジェイテクトStingersもあるので、バドミントン教室も開催できたら、子どもたちは絶対に喜んでくれるはず!」と、子どもたちの笑顔につながる社会貢献活動に意欲的だ。

「豊橋工場の社会貢献活動に参加した子どもたちが将来、ジェイテクトに入社して活動を継続してくれたら40年モノの大プロジェクトになりますね」と三人は目を細める。



砂浜再生プロジェクトは正に「塵も積もれば山となる」の取り組みだ。七根海岸で生まれたアカウミガメがまたいつか帰ってくる日を海風と共に待ち望む。

豊橋工場の挑戦は止まらない。

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